国際ロボコンFRC2024はじまるよー #1 ルール編

ルール発表の瞬間は見ようと仮眠をとったところ起きたら全てが終わっており、そのまま二度寝したところ午前も消失してガン萎えしているらずりです。怠惰〜(挨拶)
キックオフということでテンションは上がっているので、今年の日本チームの見どころや軽いルール紹介と考察をしようと思います。

自己紹介

改めまして、ロボコン大好き FRC卒業生のらずり(@Lazuly_tech)です。FRCはメンバーとして2020シーズンに6909 SAKURA Tempestaで活動した後、2021,2022シーズンに8615 SAZANKA Roboticsでメンターをしていました。昨シーズンは学生ロボコンに専念するためメンターを休んでおり、そのままかれこれあって今シーズンはどこのチームにも所属していません。

FRC2024開幕!

本日1月7日(JST)は国際ロボコン FIRST Robotics Competition 2024のルール発表日です。ここから約1ヶ月半〜2ヶ月のロボット製作時間が始まり、日本チームは今年は4月3~7日に開催されるハワイ地区大会に挑みます。

まずFRCとは

FIRST Robotics Competitionとは、アメリカの非営利団体FIRSTが提供するロボット競技会です。FIRSTは"For Inspiration and Recognition of Science and Technology"の略で、FRCの他にFLL(FIRST Lego League)やFTC(FIRST Tech Challenge)など、4~18歳の子供達にSTEM/STEAM教育(理工学系教育)に触れさせると同時に自信や問題解決能力の向上につながるような様々なプログラムを提供しています。

競技は8m×16.5mのフィールドの中に1.2m級のロボットが6台いる状態で行われます。物を飛ばしたり置いたり、台に登ったり棒にぶら下がったりとロボットの大きさだけでなく動きも大きいのが特徴です。毎年ルールも変わるので、マンネリ感もなく最高!

また"More Than Robots"のモットーの通り、企業との連携や中高生へのアウトリーチ活動、そもそもそれをできるようにするチーム運営など、"Robotics Competition"という名前の割にロボット製作以外の面がとても大きいです。

簡潔にいえば中高生が企業の協力を得ながら科学技術を周りに広めて、ついでにデカいロボットを作る大会です。

日本チームの挑戦

FRC自体は第一回大会が1992年に開催されており、NHK学生ロボコン(第一回:1991年8月)とほぼ変わりません。日本には予選大会がないうえ参加費も相当高価なためハードルがとても高いため、日本勢の初参加は5701 Indigo Ninjasと5749 Tokyo Techinical Samuraiの2015年となっています。それから10年目となる今年、日本のFRC界には大きな波が訪れようとしています。(後ほど紹介)

ルール紹介

テーマはCRESCENDO、やることは……?

そう、輪投げ
私が知る限りの学ロボ勢唯一のメンターであるきゅりあす氏は、楽しい楽しい輪投げの世界に幽閉です👋

試合形式

試合は、自動操縦限定時間の15秒(Autonomous Period, AUTO)と、そこから続く手動操縦可能な2分15秒(Teleoperated Period, TELEOP)の計2分30秒で行われます。
予選大会の予選(Qualification Matches)では1試合ごとにランダムに組まれた3チームを「アライアンス」と呼ばれる1組として、2アライアンス対抗で行われます。その試合形式も相まって、学ロボとは異なり、ロボットの動きやできること、得意/不得意などの情報は事前にオープンになっていることが多いです。

タスクと得点

主な得点方法はNOTEと呼ばれるこのオレンジ色のリングを

ロボットの展開制限外にあるSPEAKERに投げ入れたり

人がすぐそばにいる低めのAMPに入れたり

試合の最後にはチェーンをつかんで浮いたり

さらにはそのままNOTEを入れたり

最後の最後には人が投げ入れたり

投げ入れる範囲が大きかったり入れる位置が低かったりするので、学生ロボコン/ABUロボコン2023"Casting Flowers Over Angkor Wat"よりかは易しい競技になっているのではないかなと思います。リングの柔らかさ次第では高専ロボコン2015「輪花繚乱」の方が近い可能性があります。
チェーンは前代未聞です。一応過去のFRC2017 "FIRST STEAMWORKS"では綱を掴んでよじ登る回がありましたが、それよりもFRC2020 "INFINITE RECHARGE"や2022 "RAPID REACT"のハンガー掴みの方が近いかなと思います。

得点表です。

まず、AUTO時のリングでの得点は、TELEOP時の得点より高くなります。そりゃ自動だもん。

またAMP/SPEAKERの名前の通り、AMPに2つ以上のNOTEを入れた状態で人がボタンを押すと10秒間"AMPLIFICATION"となり、SPEAKERでの得点が1.5倍(2点→5点)になります。これはデカい。今までのルールでは低い場所にある得点エリアは得点が低いだけで何もない、ただ蔑ろにされがちなエリアでしたが、今年は勝敗と決勝トーナメント進出の鍵を握るエリアになっています。

そういえばチェーンを登った後、試合終了の瞬間に入る点数は例年1機20点くらいのイメージでしたが、決勝トーナメント進出のために必要なRanking Points入手条件になる程度と低くなっていますね。そこからも今年はAMPLIFICATIONが重要といえそうです。

決勝トーナメント

各試合の勝敗はその試合の点数で決定しますが、決勝トーナメント進出にはRanking Pointsが関わってきます。入手条件は

  • 試合勝利で2点、引き分け1点
  • NOTEを18個(ある条件を満たせば15個)入れる
  • チェーンを登ったりするタスクで10点以上獲得する

といった具合。全予選試合終了段階でのRanking Points上位8チームがAlliance Captainとして、決勝トーナメントを共に戦いChampionshipを目指す3チームを指名します。
この手続きはAlliance Selectionと呼ぶのですが、順番やCaptain辞退の読み合いなどあり、未だに理解できていません。

日本チームの紹介

ここで一気に紹介をしたいところですが、記事が長くなったり、私も提出物を終わらせたいので後日とします。

ちなみに今年日本から参加するチーム数は過去最高の7チーム、さらにうち4チームが新チームとなります!予選大会最高順位だった新チーム(Rookie Teamsと呼ばれますが)には、Rookie All Star Awardが贈られ、世界大会出場権を獲得できます。今は大所帯のSAKURA Tempesta、Yukikaze Technologyもかつて獲得した、スーパーチームの登竜門?ともいえそうな賞です。来年はいくつ残ってるかな

全く知らないチームが2つほどあるので、もしこの記事を見てくださっていたらお話し聞かせていただけると嬉しいです!

まとめ

今日からヒューストンの世界大会を目指す中高生の挑戦が始まります。製作費や輸送費だけでも多額の資金が必要になるので、チームのクラウドファンディング等見かけた場合はぜひご支援のほどよろしくお願いします!

次回: 日本チームの紹介

激安Swerve Driveの紹介 〜ロマンチストと弱小校こそ独ステを作れ〜

この記事は学ロボ Advent Calendar 2023 - Adventarの17日目の記事になります。

  • 更新
    • 12/17 5:00 横国の方から「ギヤを3DPで作るな」との言及があったため追加しました

はじめに


※今回はそういう話ではございません。

自己紹介

電気通信大学2021年度入学のらずり(@Lazuly_tech)です。NHK学生ロボコン2023ではチームを8年ぶりの出場まで持っていき、現地ではチームリーダーをしていました。1勝もできないまま全敗世代として終わってしまったものの、特別賞を受賞して、何とか息をつなぎました。

そんな学ロボ23からももう半年が過ぎました、時の流れは早いものですね。

所属チームであるロボメカ工房NHKロボコン部隊については昨年のアドカレ記事の一部をご覧ください。当時からの訂正点は「例年よりもハイペースで製作が進んでいます」でしょうか。この記事の後に恐ろしいほど開発が減速しました。

「独ステ」とは

今回の記事のキーワードである独ステについて、簡単な説明を入れておきます。

独ステこと「独立ステアリング機構」(英: Swerve Drive)とは、走行するためのタイヤそのものを回転させてしまうことで走行方向を変える機構です。力の合成で走行するオムニホイール・メカナムホイールとは異なり、進行方向に対して直接トルクを出せるのが特徴です。
タイヤ1つにつき、そのタイヤを駆動させる(地面と平行な軸で回転させる)ためのモータと、タイヤを地面と垂直な軸で回転させて進行方向に向けさせるためのモータの計2つのモータが必要になり、自ずと制御も難しくなります。

ロマンチストと弱小校こそ独ステを作れ

この記事を書いたきっかけ

下級生とSwerve Driveについて話していたとき、彼が検索をかけたところ「独ステ不要論」が最初に入ってきたと聞きました。「フィールドそんなに広くない」「メカより制御」「加速度はいくつ以上でないと認めない」「部品点数が多い」など、さまざまな意見があります(正直何も言い返せません)。

そこで、私が2023シーズンに設計・製作したステアの紹介を通じて、性能面だけでないステアの利点に触れていきます。大層な副題にしましたが、思想には思想をぶつけよということで……。

電通大2022ステアの問題点

大会当日には院1年生になる上級生が設計・製作したステアです。堂々のルール違反。このステアはまぁ色々と言われていました(先輩ごめんなさい)。

[ 写真後日貼ります。撮影忘れました。 ]

  • 1ユニットあたり
    • 2kg、重い
    • 2~3万円、高い
  • ステアリングのギヤ比が高すぎて手で回せず、Z相検知の初期動作に一苦労
  • 練習場所の凸凹に対して車高が低く、モータがストールしてMDが○ぬ
    ↑あぁ私のCloverが……
  • 加工は大学のワイヤ放電加工機でしているので申請が……(そもそも導電性のものしか加工できない)

ということで、軽く、安く、車高が程よく高いステアを目指してネットの海へ船出をしました。

参考にしたもの

都立大2022ステア

言わずと知れたフジータステア "Removable Swerve Drive"。機体本体に接続されていてステアリング用モータがついている板から、なんと走行用モータ部分が取り外せるものになっています。が、私が注目したのはギヤの素材と取り付け方で、エンジニアプラスチックの1種であるPOM(ポリアセタール)製のギヤにセットカラーを取り付けて、軸に対して面圧で固定するというものです。いろんなところで流行ってはいそうでしたが、私はここから初めて知りました。さらに注目すべきはホイール部分です。それについては下で紹介します。

津高専の試作ハイグリップタイヤ

三ツ星ベルトさんのリブスターベルトU 背面コグ付きのウレタン多条Vベルトを足回りとして使用したものです。沼津高専の後藤技研さんがステアへの使用を視野に入れ、自作ウレタンホイールのノウハウ依存の問題(今はそもそもADAPTの原液が売っておらず作れない?)や柔らかさと薄さの兼ね合いから編み出したもののようです。

元はこの部品の用途としてはただのVベルトで、背面のコグはグリップ用ではなく、屈曲性を良くしたり放熱を促したりするための形状です。グリップ用でないならそこまでなのではと思う方もいるかもしれませんが、大丈夫でした。2023ではRRの足回りにも採用しましたが、坂で滑ることはありませんでした。またフジータさんからも結構えげつないエピソードを聞いています。

何よりこのベルト、安い!電通大2022ステアのウレタンホイールは1つ3000~4000円ほどしましたが、ベルト本体は1本1000円しません。プーリは3Dプリントなので実質タダ!

溝付きベアリング式

最後に、ステアリング方向については京大2022や、それ以前から東大でも見られていた溝付きベアリングを用いたガイドに辿り着きました。

ステアといえば外形100mmほどの大径ベアリングのイメージでしたが、1つ3000~4000円ほどするうえ、サラッと4つで1kgにもなります。高い!重い!それに対して2022大会後のオンラインレセプションで複数大学が推していた溝付きベアリング式は、1個250円ほどなので1ユニット4個で1000円、ベアリングだけなら4つで30gもありません(挟まっている板相当の重さは、大径ベアリングを挟む部品の重さで相殺されるものとみなします)。

電通大2023ステアの紹介

とにかく安さを求めていたので、格安なステア「格安テア」「格安werve Drive」、無理やり英訳すれば"Inexpen-SwerveDrive"になるでしょうか。

またその他の特徴として、車高が20mmになるように設計されている点が挙げられます。 私たちの活動場所である東35号館111号室は所々にコンセントの突起が、東9号館209号室は床が波打っています。重心を少しでも下げるために車高は低くしたいものの、低くするとコンセントの突起にや床の波に引っかかって2022はMDが、2023はおそらく安全装置のヒューズが即死します。

走行用モータ周り

走行用モータ減速部分

モータは毎年マブチ様からいただけるRZ-735VAを採用し、それをCNCで切削したPOMギヤで1:5,から1:2の2段階で合計1:10の減速比にしました。中心から外れているギヤは、Vベルト用に軸同士を離れさせるための中間ギヤです。

この減速比は、部品点数の少なさを重視しつつ(頼りないが、ギリギリ)まともな加速トルクを確保できるラインなのではないかなと思います。現在は加速トルクを求めて下級生の協力で3段階で減速比1:15のステアを作っているのですが、「ギヤ多くないっすか?」とのクレームを毎秒もらっています。ギヤのモジュールは1にしているので、CNCで切削をする場合はエンドミルを3mm→1mmに変えるという手間の多い加工をするか、終始1mmのエンドミルで折れないか怯えながら時間をかけて加工するかの2択を迫られます。部品の少なさは正義。ダイレクトドライブのインホイールが一番正義。

ここで「3Dプリンタでの出力はしないのか」という疑問が上がるかと思いますが、製作当時はロボメカ工房全体として3Dプリンタリテラシーがオワっていたり(ベッドにマスキングテープの代わりに養生テープを貼る、大量のサポートがついたものを印刷する、大きいモデルや複数モデルを一気に印刷しようとして失敗するのをデータを変えずに連発する など……)、出力物が大きくなる幅の調整が面倒だと感じたりしていたため、採用しませんでした。派手に3Dプリンタを使用すると盲信者が活き活きとしてしまうことにも警戒していました。俺は3Dプリンタ好きくない。
そんなこともあり、横国2023の3Dプリンタギヤ&スリップリングを用いた爆速爆音ステアには感動しました。あれはロマンofロマンです。とても好き。

記事を出した直後に、横国の方から「ギヤを3Dプリンタで作るな」との言及があったため紹介します。試合での故障の原因がギヤだったそうです。
実は私たちも試作段階では3Dプリントギヤだったのですが、POMギヤに変えてからは騒音が減り、手で回した感じからしても明らかに負荷が減っていました。

ちなみに、中段軸と車軸の間にあるギヤは致命的な欠点となっています。片持ちのため、加速時など高トルクになると外に逃げてしまい力の伝達を拒みます。ステア駆動輪側のギヤは特別な対策をしない限り絶対両持ち。怪しいおじさんとの約束だよ。

ステアリングギヤとの接続部分

減速部分とステアリングギヤ・溝付きベアリングに挟まれるアルミ板部分は、はめ込みで接続されています。ギヤを挟んでいる板にある溝の下の部分が心細く感じる方もいるかとは思いますが、橋渡し時のように1ユニットに20kgほどかかっても壊れなかったので問題ないと思います。

組み方は説明の仕方に困ったので、Fusion 360のアニメーション機能を使用して動画にしてみました。YouTubeに公開するのはじめてかも。

youtu.be

ステアリング用モータ周り

モータ→走行用→エンコーダの順に57枚、80枚、40枚のギヤを使用しています。

エンコーダ(AMT-102,インクリメンタル)を用いた機構の原点復帰をするためには手で指定の範囲に動かしてやる必要があるのですが、2022のステアはRS-555(IG32の1:71付き)にたしか1:8で減速していたので原点復帰に一苦労していました。それを受けて2023では軽量化も考えてRS-385(IG32の1:71付き)に1:2で減速させるようにしました。トルクは小さくなりますが、原点復帰のための範囲も増えて、軽く回せて幸せになりました。それが本当に幸せかどうかは諸説あり。 57枚はなんとなくです。

お値段

1ユニットあたりの値段を算出するがてら、部品を挙げていきます。 - RZ-735 (¥0, マブチさんより) - RS-385 (同上) - AMT-102V (¥3775×2) - POM板 (¥1820) - アルミ板 (¥1700) - ウレタンベルト (¥600) - 初段の金属歯車 (¥750) - セットカラー (¥600×7) - 溝付きベアリング (¥200×4) - ベアリング諸々 (¥1800)

合計19220円、AMT-102Vがあれば10670円です。M3508+オムニホイール+構造用部品よりギリギリ安いと思います。部品点数は多いけど……

このステアを導入して良かったこと

機構面の教材になる

特に軸周りの設計についてです。実は車軸は段付き軸、中段軸は段無し軸になっており、ベアリングのフランジの向きや固定する部品の有無が異なっています。
やはり設計を始めた新人ロボコニストが躓きやすい点として挙げられるのは軸周りの設計かと思いますが、このステアユニット1つでベアリングの取り付け方の例示と比較ができます。

また、CNCの利用を想定した設計の例にもなっています。ギヤを挟む板や80枚ギヤには板を角に当てられるようにする逃がしの設置、ギヤ切削のためのエンドミル径変更の必要性など、このユニットの製作を通じて技術向上に貢献できていると感じています。

表に見せやすい

「これロボットのここから取り外したものなのですが〜」 と言ってメカメカしいものを見せられる良さ。人の目を惹ける上、チームの改革の代表例として挙げられるもはや遺産のようなものだと思っています。
軽くて持ち運びもできるので、ロボコン旅行のお供にいかがでしょうか(?)

夢が叶った

もうここまで来ると言い訳ですね。

チームに加入してからずっと、ステアユニットの設計・製作をしたいと思っていました。2022のCAN対応MD Cloverの開発動機はステア製作欲によるものです。

まとめ

私が設計した電通大2023の独ステユニットの紹介と、ロボコニストを魅了し続ける独ステの利点について挙げてみました。1つの機構にこだわり続けるのは視野が狭まってしまい危険なことではありますが、ただ出場に向けて製作するだけでは得られないものがあると思います。技術的・金銭的なことも考慮しながら、みんなもステアを作ろう!

最後に改めてもう一度
ステア駆動輪側のギヤは迷ったら両持ち!

ロボコンでの設計の話 in 電通大ロボメカ

この記事はUEC Advent Calendar 2022 - Adventarおよび学ロボ Advent Calendar 2022 - Adventarの15日目の記事になります。

学ロボアドカレの前日の記事はありませんでした。 電通大アドカレの前日の記事はSugiyamaさんによる「アジャイルで本気でアプリ作ってみた」でした。ロボット製作は基本的にウォーターフローモデルに近いと感じていますが、試作段階ではアジャイルに近い体制が見られるような気がします。シーズン中をアジャイルで駆け抜けるには膨大な資金・人・技術力が必要になってしまうため、それらのリソースが莫大なチームか、ハードの部分が少ないソフトウェア開発ならではの体制で新鮮に感じます。

www.team411.jp

はじめに

導入が長いです。私やロボメカ工房については知ってるよ〜という方は本編まで飛ばしちゃってください。またこの記事はあくまで初めて大型ロボコンの設計を担っている若僧のひとりごとです。

自己紹介

こんにちは、現在絶賛ロボコンシーズン中 uec21の Lazuly (@Lazuly_tech)です。現在ロボメカ工房NHKロボコン部隊にて機構班長を担っており、2023年6月4日に行われるNHK学生ロボコンに向けて機体の設計をしています。 本日12月15日の17時はちょうどそのエントリーシートの提出期限です。現在(12/14 23時ごろ)書き終わってなくてめっちゃやばい。(12/15 17時追記 無事提出・受理されてエントリーが完了しました!)

今回は初のアドベントカレンダー企画参加になります。Qiita等で見ていて憧れのような気持ちがあったので、参加できて嬉しく思います。カレンダーを作成していただいた主催のニー子さん、Emileさん、ありがとうございます。

ロボメカ工房 NHKロボコン部隊の紹介

本題に入る前に、私たちロボメカ工房およびNHKロボコン部隊の紹介と宣伝をさせてください。

ロボメカ工房は情報工学工房・電子工学工房などと同じく、電気通信大学の「楽力教育」プログラムの一つとして、ロボット製作を中心としたサークル的活動を行っている団体です(学友会傘下ではなくII類の中。調布祭ではのびのびできてとてもよいぞ〜)。ただし他の工房と違って単位はもらえません。だからと言って気軽に消えて良いというものではない。ちなみに来年度の代表は私の予定です。新歓担当でもあるのでその機会があればよろしくお願いします。

そんなロボメカ工房には2022年度現在5つの部隊があり、各部隊それぞれ別のロボコンや目標に向けて活動しています。私たちのNHKロボコン部隊は名前の通りNHK学生ロボコンへの出場をいる部隊です。実は過去には8回の出場経験があり最高成績はベスト4のチームでしたが、2015年大会のロボミントンでベスト8・企業特別賞を獲って以来忽然と表舞台から姿を消し、(中止になった2020年を除く)2022年大会まで6大会連続で2次ビデオ審査で落選をしています*1

2023年大会はというと現在進行中で、下のような予定になっています。

  • 2022年8月21日 ルール発表
  • 12月15日 エントリーシート提出期限
  • 2023年2月下旬 1次ビデオ審査
  • 4月下旬 2次ビデオ審査
  • 5月上旬 出場チーム発表(2次ビデオ審査の合否発表)
  • 6月4日 NHK学生ロボコン2023 (@太田区総合体育館)
  • 8月27日 ABUロボコン2023 (@カンボジア・ブノンペン)

今シーズンはいつものように2次ビデオ落ちにならないよう言葉だけでなく製作面・運営面どちらも改善し、例年よりもハイペースで製作が進んでいます(他大学からするとこれが普通どころかまだまだ遅いのだが)。8大会ぶりの出場&決勝トーナメント進出を目標にしています。制御・回路も前シーズンから引き続き大きく成長し、自称「今一番伸び盛り」のチームです。何にチャレンジしても楽しいチームです。ぜひ応援(とチーム見学&加入)よろしくお願いします。興味があれば私に連絡ください。

この1年半前のツイートが実現しそうになっている今日この頃(これの技術基盤はほぼ完成)。この通り伸び盛りです。ぜひロボメカ工房NHK部隊をよろしくお願いします。


前置きが長くなってしまいました。そろそろ本編に入りましょう。

本編

この記事を書いたきっかけ

焦りです。決してアドカレで何か書かなきゃということではないです。 「ソフトの使い方を教える」などではロボットの設計については引き継が成り立たず、制御や回路とは異なりモノの保持をしても意味がなく、経験に基づく感覚的なものや知識を持って設計できる人が必要であると感じたからです。 「またできる人が現れるのを待てばいい」ではチームに持続性がありません。

文字に起こしながら整理をすることで何か上手な引き継ぎ方や教え方を掴めないかなと考え、このテーマで記事を書くに至りました。今回は課題研究と新人大会 F3RCに続き3度目の設計中とまだまだ若僧ではありますが、私なりの考えを綴ります。

「設計ができる」とは

ロボット製作の手順

私たちのチームのロボット製作手順(予定)を紹介します。チームの環境次第で適した方法は変わり、私たち自身もこれからの調子次第ではこの予定が変わる可能性もあります。

  1. ルールが出たら話し合い、作戦とロボットの大まかな役割を決める

  2. (ここから機構のことに絞ります)
    役割を満たせる機構の動きを決める

  3. 動きを満たせるようにスケッチ等を描いて概形を決める

  4. CADで設計する

  5. 加工してモノに起こして動かしてみる

  6. 反省。4に戻る

そもそもなぜ設計をするのか

手戻りを減らすためが最も大きい理由であると考えています。 ロボットを製作するにはアルミ角パイプや金属・樹脂板、ネジ類などを消費します。手戻りが起きてしまうとそれらの材料が無駄になってしまったり、買い足すためにお金もかかります。また、再設計と加工をするにもさらに時間がかかります。

ロボコンは1年未満の期間での開発が求められ、お金も有限であるため、機構部分の手戻りが命取りになってしまうでしょう(なお十分なリソースがあれば影響は少ない)

また図面などで細かい寸法や全体像ができていると加工へ受け渡すのが容易になったり、チームとしての目標となりモチベーションを保つ手段になったりすると思います。

設計の前準備

いきなり形を決定させることは難しいため、設計の前には調査や試作などで準備をすることが多いです。

調査は、似た動きの機会やロボコンを参考にしようと調べることです。ネットや本を漁ったり、自チームの過去の機体を探ることで様々なヒントを探します。

試作は、感覚的にでも部品を組み合わせてロボットの一部分を作ってみる作業です。調査するだけよりも確実な動作につながります。 強豪校では数百万円とも言われる資金や、膨大な人数と高専ロボコン出身の技術力を合わせて多数の試作をし、設計に移しているようです*2。なのにさらに超短期間での再設計を連発しています。怖い。怖すぎる。

一方私たちにはそのように多大な資金はなく人数も技術力も芳しくないため、試作よりも調査に重点を置くことで、失敗のリスクを冒してでもロボットを完成させようとしています。(新人大会で試作重視の立ち回りをしましたが、各機構試作を繰り返すことはなく完成も大会当日に……。)

「CADが操作できる」と「設計ができる」の違い

部品点数や拘束条件が増えていくと、紙に描くだけでは関係を把握しづらくなっていきます。紙に描くと仕様変更があった際に描き直しになる場合があるため、CADを使用して設計をしています。ただタスクを達成できるだけでなく整備性をよくしたり、見栄えをよくしたりするなどの工夫も加えやすくなります。また3Dモデルの材質(マテリアル等)を設定することにより加工を待たずにおおまかな質量を確認できたり*3、CNCやレーザ加工機の加工データを簡単に製作できたりします。というか様々な加工機を使うことが多いのでCADを使わない方が損です。

しかし、CADを操作してモデリングをし、3Dプリンタで出力する といったことができる人はそれなりにいるのですが、モータからカップリング、ベアリングまでを選定してロボットの機体全体の設計ができる人はそれに比べるとごく少数であると感じます。私たちのチームでは今年からFusion 360を使用していて、加入前から使用経験のあるメンバーもいるのですが結局CADでの設計は私一人……
(ちなみに機構の案出しは複数人で行っています。)

CADの操作ができることとロボットの設計ができることは同値ではないのです。

設計ができるようになるには

CADの操作ができる、材料力学を授業でやっているなどと言っても設計ができるというわけでもありません。本編冒頭で言及した通り、設計は知識と経験で成り立っています。

知識

並行リンク・往復スライダクランクのような機構の知識、モータ・ギヤ・タイミングベルトのような部品の知識など、必要な知識は多種多様です。材料力学・機械力学の授業は抽象的なため役立ちにくいですが(設計時に使わなくはないです)、先輩から話を聞く限り機構要素設計の授業は直接役に立つと思います。まあ私は基礎演習Aを落単していてその授業が受けられないため評価はできませんが。

機構の知識

想定している動きを実現させるためには機構を考える必要があります。その機構全体の動きが派手であっても基本は単純な機構から成り立っている場合が多いです。その「単純な機構」には並行リンク機構、往復スライダクランク機構、タイミングベルト、ラック&ピニオンによるものなどが挙げられます。私は小学校時代から技術の教科書の機構がまとまっているページが大好きでよく眺めていました。今では普通にスマホが自由に使えるので、たくさんの機構がまとめられているWebページ「からくりすと」を眺めています。

karakurist.jp

(チェビシェフリンク? テオヤンセン?いや使う機会なんか無いだろそんな機構……)

このページに載っているものなどが身の回りで適用されている様子を見るのも良いことです。フォークリフト、クレーン、トラック、ダンパーなど……

部品の知識

機構もフレームもねじも全ては部品、つまり部品の知識がなくては何もできないのです(機構の形次第な気もするのですが、卵が先か鶏が先か論争……)。 大体の部品はJIS・ISOに従っているのですが、その大元の規格よりも部品の名前・形・役割を覚えます。どれかを覚えていれば他人やGoogle先生に尋ねれば理解されます。

選定・購入にはミスミやモノタロウを使用することが多いです。ミスミのECサイトは特に部品の絞り込みがしやすく、部活動・サークルには「ものづくり支援」もあるので重宝しています。このミスミのECサイトにはWebカタログがあるので、これをペラペラめくりながら部品の名前・形・役割を覚えていきます。細かい型番を覚えるのではなく、役割が似た部品の用途の違いに注目して関連づけて覚えると実用性が高いでしょう。例えば、ギヤ・タイミングベルト&タイミングプーリ・ベルト&プーリそれぞれの特徴と使い分けなど。

MISUMI(ミスミ) | 総合Webカタログ

デジタルカタログ | MISUMI(ミスミ)

「FA用メカニカル標準部品」の2巻分は目を通すべし

経験

知識知識といっても使ったり、使っている現場を見たりしないと覚えられるわけがありません。

経験こそ、命。

大会に出る

大会のために実際に製作し、失敗と成功を繰り返すのが最も身に染みる方法であると考えています。痛い目見ると悔しいですが育ちます。来年度の弊チーム新入部員はメカダービーでものづくりを体験した後、F3RC関東春ロボコンに出場してもらう予定です。

他人の製作物を見る・質問する

Twitterをすべし。交流会に行くべし。Maker Faireに行くべし。それらの場所のように他の団体の人と関わる機会に参加し、製作物を囲んで話し合うことで新たな気付きや着想を得られます。

説明する

自分の設計を理解して改善するためにも、そして他人の製作物を経験として吸収するためには説明することが有効であると考えています。写真、発言、ツイートなどをかき集めて説明をして噛み砕きましょう。

設計に大切なこと

説明は反芻の機会であり、説明したことは自分の選択肢として手元に残ります。カタログやサイトを漁り知識をつけてから説明することで選択肢を増やすこと、そして設計を繰り返しその選択肢を適切に選ぶことができるようになるまで経験を重ねることこそが設計に重要なことであると考えています。

おわりに

自分語り

ポートフォリオサイト Lazuly's Page にあるように私は多数ロボコンに参加していますが、それだけでなく他人のロボットを観察して質問し、説明することで成長してきたと感じています。

真面目な設計に触れたのは、SAKURA Tempestaにて雨桜に関わったときです。「恐ろしかった」と評価された1部品*4しか設計していないものの、完成披露会では機体の説明をしていました。あの場には保護者もいたため、部品1つ1つというよりも機構の動きに注目した説明をしていました。聞き手の構成次第で話す内容を変えるのも大事。
最近では学ロボの交流会に行くのは大体pizac先輩と私であるため大学に戻ると写真を見せたりしながら他のメンバーに紹介する必要があります。説明の時間です(他のメンバーももっと来ればいいのに)。この場合は聞き手に知識があり時間もたっぷりあるため、作り方や部品まで注目して話します。

説明することは技術をつけていくこと以外にも様々なことに活かせると思います。私もプレゼンテーションが高校入学時より何倍も上手になったと感じています。

設計って曖昧なもので

ここまで話しておきながらまだ厄介な問題があり、「ロボット製作の手順」は説明の都合上無理やり分けたもので、明確な遷移のタイミングがないという点です。このタイミングについて立崎さんと話したことがあるのですが、「なんとなく」「(使う部品も)自然と決まってくる」とのことでした。おいおいマジかよと思いましたが、自分の設計ノートを掘り返してみるとどこまでスケッチしてCADに移っているかがものによって異なっていることがわかりました。

オムニユニットの設計SwerveDriveの設計

1枚目はオムニホイールを用いた足回りの設計スケッチです。ずいぶん適当にフレーム・ホイール・モータの位置を決めています。
対する2枚目はSwerve Drive (独立ステアリング機構)の駆動輪部分のスケッチです。こちらはギヤの歯の枚数や使用モータも決めて、大まかな距離まで書き入れています。なんなら強度計算もしていますね。

部品点数や拘束条件の数の違いが影響している気がします。正直私にもわかりませんが設計してみたらなんとなくわかると思います。ひとまずSwerve Driveの設計をしてみましょう(適当)。

設計中のステアユニット

ちなみに上のステアユニットは都立大のフジータさんの取り外し可能なユニットを参考にしています。交流会やTwitterでのやり取りで色々と調査を重ねました。

今後の取り組み(勝手に考えているだけ)

これを踏まえてチームの設計者を育てていくために、講習の一環として「設計ガチゼミ」たるものを設けようかなと思っています。設計に興味があるメンバー向けに、各自が他の団体のNHK学生ロボコン高専ロボコンの機体を調べてまとめ、スライドで発表するというものです。大会の実践に加えて説明をすることによって、より知識を増やしていこうという算段です。真似をしてCADに起こしてみると新たな学びが得られるのではないでしょうか。

やっと〆ます。 長々とした記事をここまで読んでくださりありがとうございました。結論がいまいちまとまらないまま記事を終わらせてしまいますが、それくらい設計は創造的な行為だということではないでしょうか。最近OpenAIのChatGPTが対話形式でコードを書いてくれるというのが話題になっていますね。部品選定時に重量・大きさ・値段などを突き詰めると無限に時間がかかるのでAIがやってくれねぇかなぁ〜〜なんて感じますが、流石に無理な気がします。でも絵も描けるからできるようになるのかな、ラーメンはどんぶりから直で吸って食べるけど。設計は圧倒的にAIに取られにくい職だと思うので、できたら生成できるようになってほしくないです。

最後に

何が何でも2024年大会までに本戦に出場します。応援よろしくお願いします。

明日の記事

電通大アドカレ16日目はつまみさんの徒歩記事です。さすがまた歩いてるな

学ロボアドカレ16日目は東北大 T-semiの学ロボリーダー・溜雑さんのCAN通信についてです。わあいCAN、らずりCAN大好き。私自身FRCのSPARK MAXをはじめとしたモータドライバに憧れて去年はCAN対応MDを作成していたこともあり、とても楽しみです!

長い記事を読んでくださりありがとうございました!

*1:Wikipedia NHK学生ロボコン https://ja.wikipedia.org/wiki/NHK%E5%AD%A6%E7%94%9F%E3%83%AD%E3%83%9C%E3%82%B3%E3%83%B3

*2:豊橋技術科学大学 ロボコン同好会 ご支援のお願い https://tutrobo.rm.me.tut.ac.jp/support/

*3:「ロボット2台やコントローラ等の合計重量は50kgまで」というルールがあるため、常に重さを意識している

*4:https://twitter.com/Lazuly_tech/status/1589635071895486464

らずりのLaTeXテンプレート解説① 〜基礎科学実験Aにも〜

※注意

この記事は私が使っている \LaTeXのテンプレートの解説であって、 \LaTeXの書き方やコンパイルの仕方。レポートの内容についてのものではありません。

はじめに

こんばんは、らずりです。2月に基礎科学実験Aの履修が無事(ほんとか?)終わってから \LaTeXの使用機会もガクッと減りましたが、最近はロボコン(後日記事を書きます)のルールを \LaTeXで書いています。実験レポートや論文だけでなく、意外とラフなのも書けるんだよ〜ということを後々紹介できたらなと思っています。ちなみに私の \LaTeX記述環境はNeoVim + ddc.vim + texlab です。VSCodeは補完がもっさりしていて避けがち...…

本題ですが,皆さんは自分専用の \LaTeXテンプレートを持っていますか?私はレポートを何度も書くうちに「これがすぐできたら便利だな」と感じてパッケージや記事を漁っては追加することを繰り返し,もちろん時間もなくなり現在の継ぎ足したれが出来上がりました.同じように過去に開拓してきた電通大の先輩方の記事も多く見つけました.この記事ではそんな自家製のたれ・ \LaTeXテンプレートを紹介します.

パッケージとは

C言語などにおけるライブラリのようなもので,機能の拡張・追加をしてくれるものです.パッケージを導入したり組み合わせたりして,自分に馴染むテンプレートにしていきます.

一応文法の紹介です.hogeパッケージを読み込みたい時は,\begin{document}以前(「プリアンブル」と言います)に以下のように記述します.

\usepackage{hoge}

hugaというオプションを適用するときは

\usepackage[huga]{hoge}

とすれば大丈夫.

テンプレートの紹介

テンプレート紹介と言っても参考リンクの紹介と多少の使い方の解説です.

↓何にでも使えるタイプのテンプレート.こちらを紹介します.

github.com

↓実験A用のテンプレート

github.com

基本的なパッケージ

graphicx(画像挿入), amsmath(数式補助), url(URLをきれいに) はもはや常識......説明は省きます.

数式強化 latexsym

latexsym は数式を扱う際に記号を追加してくれるものです.使ったことない気がするけど入れておいて損はないかなぁ......

単位革命! siunitx

必須級,革命的なパッケージです.「数字と単位の間は開けなさい!」「単位は斜体にするな!」など散々言われていると思いますが,これを入れて擦り続ければそのようなことは考えなくてよくなります.

例えばアボガドロ数  6.02 \times 10^{23} \, \mathrm{mol}^{-1}を記述する場合は

$6.02 \times 10^{23} \, \mathrm{mol}^{-1}$

と書いていると思いますが,siunitxパッケージを使えば

$\SI{6.02e23}{mol^{-1}}$

こんなに短く,まとまりのわかりやすい記述に......!!!

基本的な使い方は\SI{(数値部分)}{(単位部分)}です.また単位部分のみで\si{(単位)}と書くこともできます.

数値の部分はeを入れることにより指数部分の表現ができます.指数部分が負の場合でも1.0e-5のようにそのまま書いて構いません.単位部分はもちろん組み立て単位にも対応しています.例えば速度の \mathrm{m/s} \mathrm{m}\, \mathrm{s}^{-1}を表したい場合

$\si{m/s}$
$\si{m.s^{-1}}$

と表記すればOK.ドット1つで終わってしまうのが便利すぎる......

不確かさについては,表記方法を 1.5\pm0.1のようにしたいため,オプションに「separate-uncertainty」を指定しています.また表記方法は以下の通りです.

\SI{2.54+-0.03}{mm}

「その書き方でこうなるの!?」と便利に感じることが多いパッケージです.挙動の差については medit先輩のページ「実験AのためのLaTeX小技集」から見ることができます.

単位|実験AのためのLaTeX小技集

不確かさ|実験AのためのLaTeX小技集

カッコは楽に physics

カッコの自動調整や微分積分の記号を便利に書くためのパッケージです.

qiita.com

微分で用いる \dfrac {\mathrm{d}x}{\mathrm{d}t} \mathrm{d} は立体で書きたいが, x, t は斜体で書きたい......という場合には

\dv{x}{t}

ちなみに\dv{t}と書くと「 \dfrac {\mathrm{d}}{\mathrm{d}t}」となります.

縦に長いカッコも\left( hoge ) \right)のようにしなければ自動で幅が変わらないところも,下の表記だけで変わるようになります.

\qty(hoge)

表紙にどうぞ pdfpages

PDF書類をLaTeX書類に挿入するのに便利なパッケージです.実験Aよりも実験Bで表紙をスキャンし,pdfpagesで挿入するなどすると役に立ちます.

おわりに

実験Aはデータの取り扱いも面倒なのに添削も厳しい科目ですが, \LaTeXで書く最中にも簡略化したコマンドが使えるところは積極的に使って手間を省きましょう.レポート書く作業にも多少のコーディングがあった方が楽しいじゃん......?いくら萎えても初回のレポート提出には遅れないで出しましょう.1つも遅れずにそれぞれ1回でも出せばなんとかなります.

また,今後は個人的に決めているラベルの命名規則,表作成の補助ツールの紹介を「らずりのLaTeXテンプレート解説②」で行う予定です.

大学生の爆アド お得な学生ライセンスたち

追記

2022/3/13 Microsoft Office 等 大学で与えられるライセンスについて追記しました.

はじめに

ふと「GitHub Education 登録してないけどどういう利点があるかわからん」みたいなツイートを見かけたので,自分が使っている学生ライセンスを取れるサービスについてまとめてみようと思います.

ライセンス料が必要なものが無料で使えるまたは割引が入るというものはほとんどなので使わなきゃ損です.

大学で与えられるライセンス

電気通信大学に入学すれば無料で与えられるライセンスがあります.一覧は以下のURLにありますが,この記事ではそのうちいくつかを取り上げます.(それぞれのライセンス申請方法もここに書いてあるので記事では省略.ITCユーザーズガイドは電通大生必読です.)

www.cc.uec.ac.jp

  1. Microsoft 365

    「Word, Excel, PowerPointは自分で買わなきゃだめ?」というツイートをよく見ますが,電通大はMicrosotf 365のA5, A1を全学契約しているので必要ありません.これらのMS Officeはもちろん,Minecraft Education Editionも使えます(バージョンが低い統合版).

  2. MATLAB

    MATLABはデータ処理やグラフの描写,シミュレーションなど様々な用途に使えるツールです.実験AのグラフはExcelでやるともちろん楽ですが,体裁を整えやすいのはこっちだと思います.エアトラックのデータもインポートしてMATLABコードを書けばこの通り(このツイートでは検索避けをするためにma*tlabと表記しています).

電通大IEEE学生ブランチの方ではLaTeXの使い方と一緒に紹介されています.

GitHub Education

とても便利です.これに登録するとまずGitHubの方は月$4かかる GitHub Pro 同等の機能が使えるようになります(Publicリポジトリでしかできなかった機能もPrivateリポジトリでできるようになるとか).

...と言ってもピンと来ないですが,Educationの特典がとても大きいです.約100のサービスで割引や無料使用ができるようになります.GitHubの方で認証されてるから」という理由でライセンスを取るときの審査が短縮されることも多いです.私も全て使っているわけではありませんが,お気に入りまたは気になっているサービスをいくつか紹介します.

サービス

  1. GitHub Learning Lab

    GitHub の使い方を学べます.例えば Introduction to GitHub では,GitHub Pages を使いながらコミット・Issue・プルリク等の基本的な操作が体験できます.

    こんな感じ↓

  2. JetBrains

    JetBrainsといえばJavaの代表的なIDEである IntelliJ IDEAや C / C++ 特化の CLion ,Pythonのための PyCharm など,高機能なIDEを提供しています.VS Codeのようなものですがそれと比べて補完がとても早いです.一方で各言語のエディタを複数インストールするのは面倒でストレージの圧迫もしてしまうかもしれません.(だからNeoVimを使うんだよ)

    通常だと年30000円ほどかかりますが,学生ライセンスを取れば全て無料で使えてしまいます.あろうことか卒業生25%割引まであるらしい.

  3. Heroku

    (変更された可能性があるので現在調査中)

  4. Arduino, Adafruit

    手軽に扱えるマイコンボードを販売するArduinoと,そこで使えるシールドやセンサなどを販売するAdafruitではそれぞれの商品が割引で購入できます.まだ利用したことはないです.

他にもまだまだあります.一覧はこちら.

education.github.com

非営利目的での使用と書いてあるのでそこだけ注意が必要です.

学生ライセンス取得方法

大学で発行されるメールアドレスでアカウントを作成し直す必要はありません.自分の設定(右上のアイコン→Setting)の Access>Emails に大学のメールアドレスを追加で登録できます.この大学発行のメールアドレスを用いることでライセンスの申請が簡略化されます.

メールアドレスの例

メールアドレスの例

education.github.com

次に,下のページの "Sign up for Students Development Pack" から先ほど登録したメールアドレスを用いて申請をします.そこからしばらく待つと申請が受理され,上で挙げたサービスの申請もできるようになります.それぞれのサービスに「GitHub Educationで申請する」のような選択肢があるため,それを利用してください.

Autodesk

サービス

機械・建築方面のCADソフトとそれを補強するサービスを提供している会社です.Fusion 360・Inventor や AutoCAD,映像関係には Mayaなど,とても便利なCADソフトが揃っています.初心者向けにはTinkerCADもあります.

1年間のライセンス料はFusion 360 は61000円,AutoCADは71500円のように非常に高額ですが,学生ライセンスを取得するとこれらが無料で使えます.Autodeskさん大好き

学生ライセンス取得方法

学生ライセンスの取り方です

www.autodesk.co.jp

Autodeskアカウントを作成してから上のリンクにアクセスし,「利用を開始」をクリックします.そこから名前・大学名を入力し,学生証をスキャンしたものをアップロードします.あとは1,2日待てば完了です.

おわりに

学生であるうちは高額なライセンス料なしに様々なツールを体験し,実際に授業やロボコンなどの作業で使用することができます.ライセンスが取れない場合の無料体験期間は1ヶ月ほどで終わってしまいます.なんたる差.この機会を逃すべからず.

最後になりますが,学生ライセンスを取るより前に絶対に大学で用いる各種アカウントのセットアップをするUEC Challangeを必ずやりましょう.案内は合格時に届いた書類の中にあるはずです.